黒斑病は、春先気温が上昇すると発生し始めます。(日平均気温が15℃を超えると活性化します。)
黒斑病に感染しやすい梨は、二十世紀梨・新水・南水などの品種ですが、特に二十世紀梨の場合は被害が甚大で、他の品種の梨と比較して、倍近く農薬を散布しても黒斑病の感染により、毎年果実が全体の一割程度落果しています。
梨の栽培で、最悪の病害です。 正直な所、農薬での防除では防ぎきれないのが現状で、農薬を使用しない場合は、ほぼ全滅すると思います。
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果実の病班 |
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果実に対しての被害の状態ですが、写真の通り果実からの腐汁が袋に染みて、袋を掛けた状態でも被害果の識別が出来るほどです。 この状態になると、独りでに落果してしまいます。
写真の状態は、袋掛け前に感染した物ですが、袋掛け後も防除を定期的に行わないと感染してしまいます。 |
葉の病班 |
果実ばかりでなく、梨の樹全体に感染するため、被害が大きくなるのですが、これは葉に感染した状態です。
多少斑点が出来る位なら、特に問題はないのですが、多発すると最悪落葉する恐れがあり、梨の樹全体の勢いが劣ってきます。
また、葉の病班から果実など他の部位に、再感染する恐れもあります。
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枝の病班 |
これは、枝に黒斑病が 感染した状態です。 幹の部分など大きく成長した部分には、感染しませんが、1〜3年生くらいの若い枝には良く感染します。
放っておくと、黒斑病の感染源になるため、剪定時に病班部を削り取ったり、樹脂のペ−ストを塗り、病原菌を封じ込めたりしています。
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ボケ芽 |
梨の花芽の写真ですが、右側は蕾がふくらみ開花しそうですが、左側の花芽は全然成長していませんが、黒斑病が花芽に感染した状態でボケ芽と呼んでいます。
花が咲かないだけでなく、花芽の中で黒斑病が増殖するため、放っておくとボケ芽の周囲に黒斑病が発生しやすくなります。
開花前に、ボケ芽を取って回るのですが、全てを取り除く事は出来ません。
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雌しべ感染について |
最近多く見られる感染源に、雌しべによる物があります。 通常雌しべ感染と呼んでいますが、袋掛け前の幼果に残っている、雌しべ(写真の幼果の、上の方にあるヒゲみたいな物。)が黒斑病に感染して、袋掛け後に病気が広がり果実に感染します。
雌しべ感染した果実は、果実のお尻の方に病班が出来るため、一目で雌しべ感染と見分けられます。
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黒斑病の対策 |
黒斑病の対策ですが、一つは月並みですが、計画的に農薬を使っての防除です。 もう一つは、罹病した果実や芽等の病班部(感染源)を、果樹園の外に持ち出す方法ですが、これは栽培面積が小さい場合は有効ですが、栽培面積が広くなると実際の作業としては、難しくなってきます。
最近は、黒斑病に耐性のある品種も増えてきたので、これらの品種に品種更新すると言う方法も可能になりました。 新しい品種も良い事ばかりでは無いのですが、農薬を大量に使用しても黒斑病を抑えきれない品種は、生産的にも販売的にも今からは通用しなくなると思うので、今後は品種更新による黒斑病対策は増えていくと思います。 |
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